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お金の情報・まめ知識 2024/5/1

LDCレポート【5月号】

 

■官民挙げて促進。高齢者には、高齢者に即した「フィットネス」を。

 健康で自立した生活をできるだけ長く維持したい----そんなシニアの願いをサポートし、“健康寿命を延ばす”をテーマにしているのが「高齢者用フィットネスサービス」です。体力に自信のない人や、体を動かすのが難しい高齢者こそが通えるスポーツクラブと位置付けられています。シニア層の健康ニーズ、スポーツへの関心は年々高まっており、昨年、このサービスの利用者が84万人に到達、市場規模は997億円に拡大しています。

 成長の背景には、自治体によるフィットネス利用促進事業の強化があります。千葉市や東京都などで実施されている、高齢者のフィットネス利用料金の一部助成制度や神戸市、市川市、函館市などのように、民間のフィットネス事業者に介護予防事業の運動関連部門を委託して、サービス利用のハードルを下げ、運動習慣の定着を促す試みも。また、民間のスポーツジムによるシニア向けプログラムの充実も市場の成長に大きく貢献しています。体の状態の個人差や健康状態の変動が大きい高齢者は、各人の体調に合ったプログラムが求められます。正しい知識がないままネットやYouTubeなどを見て“自主トレ”を行うと、転倒やオーバーユース(使い過ぎ)によって膝や腰を痛めるなど、思わぬケガや事故のリスクが高まります。

 [コナミスポーツ]では、「OyZ(オイズ)」というブランドで60歳からの運動スクールを展開。“脚力向上”と“体幹強化”を中心に栄養指導まで含んだプログラムを提供しています。[セントラルスポーツ]では、“腰痛予防・改善”“骨盤バランス改善・尿もれ予防”“メタボ予防・改善”などのメニューを展開。[ラスタイルシニア]のプログラムは、“筋力トレーニング”“ストレッチ”“食事指導”の3本柱で構成。トレーナー全員が女性の女性専用ジム[リボーンマイセルフ]では、女性目線で相談にのってくれ、全106種類のメニューから的確なトレーニングと食事指導を併せて提供してくれます。

 筋力低下は、要支援・要介護認定のきっかけになりがちです。ここ数年、フィットネスサービスが好調な伸びを見せているとはいえ、シニアの人たちが高齢者用のフィットネスを利用している率は、わずか3%止まり(厚労省)。まずは、高齢者の日常生活の一部に運動の意識を定着させることが、市場拡大への必須条件といえそうです。

※参考:

厚生労働省           https://www.mhlw.go.jp/

コナミスポーツ         https://www.konami.com/

セントラルスポーツ       https://business.central.co.jp/care/

ラスタイルシニア        https://www.last-style.com/senior/

リボーンマイセルフ       https://www.shapes-international.co.jp/

日経МJ(2024年1月17日付)

 

■購買動機は、“ブランド”より“デザイン”優先へ。「ロゴレス家電」拡大中。  

 最近、家電業界を中心に、当たり前のことが覆るような現象が起こって話題となっています。優れた品質の証、メーカーへの信頼性、その商品を持つことのステータス、などの象徴だった“ブランドロゴ”。それをあえて目立たなくする、あるいは完全に取り外した「ロゴレス家電」が続々と登場しており、地味な変化ながら、今や業界の一大潮流になりつつあります。

 その背景には、各社、技術面が底上げされたことにより、どのメーカーを選んでも失敗しにくくなったことと、顧客ニーズの変化による“消費者のインテリア意識の高まり”があります。コロナの影響から在宅時間が増え、居心地に、より重きを置く人が増加。家電をインテリアの一部と捉え、住空間の中での“なじみ具合”にこだわる傾向が強まっています。オシャレで統一感のあるデザインが求められ、その結果、ロゴが、デザイン上の“ノイズ=じゃま”と感じる消費者が増えてきているのです。

 [アイリスオーヤマ]から昨年発売された「サーキュレーター」には、前面や操作部分にこれまであった社名ロゴがありません。ロゴは背面に小さくひっそりと。[シャープ]では「ドライヤー」や「空気清浄機」の前面にあった“SHARP”のロゴを昨年から撤廃。“プラズマクラスター”の技術ロゴだけに集中して独自技術をアピールする戦略に。[日立製作所]の「スティック型掃除機」は、これまで黒地に白でくっきり目立たせていたロゴを、控えめのエンボス加工に変更。

 最近の商品開発の特徴は、始めにデザインありきで、昔ではありえない逆方向の進め方が“流行り”に。

 [象印マホービン]では、2年前、商品企画のトップに、初めてデザイナー出身者が就任すると、「ZOJIRUSHI」のロゴをなくし、象マークだけにするという画期的な「STAN(スタン)」シリーズを開発。同社の弱点だった若いターゲット層の掘り起こしに成功し、20~30代のマインドをキャッチしたヒット商品となっています。

 消費者庁の『製品を購入する際に重視していること調査』(2021年)によると、1位が“品質・性能”。続いて“価格”“費用対効果”“見た目・デザイン”と続き、“有名ブランドであること”は9位にとどまっています。“見た目・デザイン”重視を世代別にみると、40代・50代が約25%なのに対し、20代では35%、15~19歳は42%に。若者の購買基準は、すでに“ブランド”ではなく、自分のライフスタイルやキャラに合致しているか否かで選ぶということが鮮明になっています。

 消費者の家電に求めるデザイン観が変わり、もはやブランドのロゴが、安心材料としての価値を失おうとしているのかもしれません。

※参考:

アイリスオーヤマ        https://www.irisohyama.co.jp/

シャープ               https://www.sharp.co.jp/

日立製作所           https://www.hitachi.co.jp/

象印マホービン          https://www.zojirushi.co.jp/

消費者庁             https://www.caa.go.jp/

日経МJ(2024年1月26日付) 

 

■猛暑でも涼しい顔。真夏に威力を発揮、「着るエアコン」の熱い商戦。

 年々、“記録的な猛暑”という言葉が常套句となるような日本の夏。ますます、炎天下の屋外で体を冷やす“暑熱対策製品”の需要が増し、市場が一段と賑わいをみせています。“着るクーラー”として数年前に登場したのが“電動ファン付きウエア”というタイプで、[アシックス]の「AIR CONDITION WEAR」(税込2万9700円)や[アイリスオーヤマ]の「クールウェア」(税込4600円)などが発売されて話題となりました。

 年々、進化が進み、より高い冷却効果をうたった製品が登場するにつれ、これまでベンチャー企業が主流だった市場に大手企業が続々と参入し、まさに熱い闘いを迎えています。

 ヘッドホン状で首に直接引っ掛けて体を冷やすウエアラブル(身に着ける)クーラーを開発して注目されたのが、[サンコー]の「ネッククーラーNEO」(税込5980円)。この製品には、“ペルチェ素子”という半導体が応用されています。直流の電気を流すと、導体(素子)の片面では吸熱(冷却)し、もう片面では発熱(加熱)するという性質を持っており、その冷却面を人体に接触させて熱を奪う仕組み。

 ペルチェ効果を活用したウエアラブルデバイスに参戦してきたのが、[ソニー]の「レオンポケット」(税込1万6500円前後)。冷やすだけでなく暖めることも可能で、夏は“着るクーラー”として、冬は“着るヒーター”として1年中使用できる充電式の“着るエアコン”です。4年前の1号機デビューから、昨年、その4代目モデルとなる「レオンポケット4」が発売。首の後ろにポケットが付いている専用のインナー(別売)を着て、そのポケットに本体(スマホよりやや小さめのパネル)を入れて使うか、付属の専用ネックバンドに本体を直接肌に触れるよう、首元に装着して使います。

 [ワークマン]がパナソニックHDの子会社[シフトール](東京)と共同開発した“着るエアコン”が、2023年発売の「WindCore ICE×HEATER ペルチェベスト」(税込1万9800円)という冷暖ウエア。ペルチェ素子を応用し、ベストの背中側に組み込んだアルミプレート(ハガキ1/2大)をボタン一つで冷却・加熱を切り替えられます。操作がスマホ経由ではなく、シンプルなスイッチ式なのが特徴。昨年、発売3カ月で、販売計画数だった3万着が完売するほどの人気商品。

 工事現場などでの作業着以外に、各種アウトドア、野外フェス、スポーツ観戦といったアミューズメントや外回りの営業での使用など、ペルチェ素子の高いエネルギー効率と確かな冷却機能は、日本の夏のアウトドア風景を変えると言われています。ただし、どんなに優れた素材といっても、これだけで熱中症対策はできません。水分補給はお忘れなく。

※参考:

アシックス          https://corp.asics.com/jp/

アイリスオーヤマ      https://www.irisohyama.co.jp/

サンコー            https://www.thanko.jp/

ソニー              https://www.sony.jp/

ワークマン           https://www.workman.co.jp/ 日経МJ(2024年1月5日付)