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お金の情報・まめ知識 2024/3/1

LDCレポート【3月号】

■歌いたくなったらサクッと1曲。「箱型カラオケ」、じわり増加中。

 コロナ前から市場全体が下降傾向にあったカラオケ業界。2016年から4年連続で減少し、ピーク時(1996~1997年)に比べ、6割弱に縮小。

 仲間を募って店まで出かけ、名前を書いて受付して、1時間でいくらというシステムの、いわゆる普通のカラオケ店や、アルコールがらみのスナックやカラオケバーなど。今どきの“酒離れ”の進む若い人たちにとっては、まとまった時間とお金が必要な上、ある種の“重さ”がつきまとい、足が遠のくのもわからないではありません。

 ちょっとカラオケで歌いたいだけ----そんな、従来のカラオケ業界、カラオケファンのニーズから見るとニッチともいえる市場を開拓したのが、業界最大手の[第一興商](東京)でした。“カラオケをいつでもどこでも気軽に”をコンセプトに開発された箱型カラオケボックス「COCOKARA(ココカラ)」です。従来とは異なる新しい歌唱環境を創出する機動性、意外性を込めて名付けられました。

 高さ2.4m、幅・奥行き各1.5mの公衆電話ボックスのような箱の中には、モニター、ヘッドホン(2個)、マイク(2本)、椅子(2脚)、デンモク(カラオケシステム「DAM」)の設備が。定員は4名となっていますが、1~2名が密になりすぎずちょうどいい空間。予約は不要で、料金は時間単位ではなく、1曲ごとに100円(現金・Suica・バーコード決済などに対応)。もちろん、1曲だけ歌って退室してもかまいません。自身の歌声は、外部スピーカーではなくヘッドホンから聞こえる仕組みなので、ボックスの外部に音漏れする心配はありません。

 全国のアミューズメント施設やショッピングセンターなどのパブリックスペースに設置。買い物ついでや仕事の合間の空き時間にサクッと1曲歌いたいというニーズに応えます。今後は、コインランドリーやカフェ、サービスエリア、バー、食品スーパー、空港、スーパー銭湯などへの展開を検討中。中には、乗客が電車の待ち時間に楽しめるようにと、駅の待合室に設置された例や、社員の気分転換やストレス発散など、福利厚生の一環として「ココカラ」を導入している企業も。外からは人影が見える程度ですが、人が行き交う場所で歌うことに抵抗があるという人のために、メーカーでは「擦りガラスタイプ」のボックスも用意。なお、設置費用や収益の配分方法などは個別対応とのことですが、設置する施設運営側にとっては、施設内の遊休スペースの有効活用で利用客に新たなサービスを提供できるというメリットが生まれます。

 “こんな所に?”という場所にポツンと置かれている「箱型カラオケボックス」。ふらっと入って歌えるという新鮮な体験が味わえる、カラオケの新しいスタイルです。

※参考:

(一社)全国カラオケ事業者協会   https://www.karaoke.or.jp/

第一興商                     https://www.dkkaraoke.co.jp/ 日経МJ(2023年11月8日付)  

 

■“建物”と“居住者”、ダブルの老い。マンションを襲う、負のスパイラル。  

 国交省によると、全国のマンションの数は686万戸(2021年)。うち、築40年を超えた“高経年マンション”と呼ばれる建物は、2018年に約84万戸でしたが4年後の2022年には約126万戸に急増。実に、全国のマンションの2割近くを占めるまでに拡大。これらのマンションの多くは、マンションブームが起きた1970年代の高度経済成長期に建てられたもので、すでに50年以上が経過しており、放置しておくと危険なばかりか、建物の資産価値が下がりかねません。

 鉄筋コンクリートのマンションは、柱や梁など、基礎となる部分に不具合がなければ耐用年数100年も夢ではないといわれています。ただし、この夢の実現には、あくまでも10数年ごとに改修を行うという前提条件を満たした場合に限られます。当然、それらを実施するには多額な資金が必要となります。そこに立ちはだかるのが、建物の老朽化と共に訪れた、居住者(世帯主=区分所有者)の高齢化という、2つの“老い”の壁でした。

 大規模改修には、管理組合による“長期修繕計画”(国交省のガイドラインでは30年以上の)とそれに基づく“修繕積立金”が必要となりますが、残念ながらマンションブーム当時には将来を見据えた修繕の計画や建物の管理といった考えが広がっておらず、管理組合自体がないマンションも珍しくありませんでした。加えて、築40年以上のマンションの世帯主の半数近くが70歳以上という現実。修繕したくても積立金がなく(あるいは、足りなく)、資金の調達も難しいという2つの老いが連鎖して、負のスパイラルに陥っているマンションが少なくありません。

 そこで国は、修繕などを円滑に進めることができるようにと、マンションの管理方法を定める「建物区分所有法」、いわゆる「マンション法」(1962年制定。以降、数回にわたり改正)を2024年に改正し、要件を緩和。これまで建て替えの決議では、居住者の“5分の4”の賛成が必要でしたが、耐震・火災対策が不足していたり、外壁などの落下の危険性がある要件に限り、“4分の3”の賛成に引き下げられます。エレべーターや廊下、配管といった共用部分だけの修繕なら、現行の“過半数”から、改正後は会合に不参加の居住者を母数から外した“参加者の過半数”の同意に。また、建物を一括して売却したり取り壊したりする場合は、現行の“居住者全員”の同意から、“5分の4”の同意に引き下げられます。

 約194万戸のマンションを抱える東京都の場合、築40年以上は1万1459棟。都では、管理組合の有無や長期修繕計画など、管理状況の届け出を義務付けていますが、6割にあたる約6300棟で30年以上の長期計画がなく、3割にあたる約288棟については、30年どころか、計画そのものがありませんでした。そこで都では、“マンション管理士”を無料で派遣するなどの対策を講じています。

 京都市では、専門家集団のNPOによる“おせっかい型の支援”を行っています。老朽化し、管理が不十分な要支援マンションを見つけ出して立て直しをサポート。管理組合の設立や修繕費の積み立てを促した結果、市内に47あった対象物件の数を9年かけて半数近くまで減らすことに成功しました。

 老朽化を“予病”し、10~20年前の段階で“手当て”していれば、今も健やかなマンションでいられたはず。“重症”になってから慌てて修繕箇所の見直しにとりかかると、工事費用の高騰などもあり、大幅な積立金不足に驚かされることに。

“ウチのマンションは新しいからまだ大丈夫”ではないのです。どんなマンションにも、必ず“老い”が訪れるのですから----。

※参考:

国土交通省                  https://www.mlit.go.jp/

(一社)東京都マンション管理士会 https://www.kanrisi.org/

法務省                      https://www.moj.go.jp/

東京都(住宅政策本部)          https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/

京都市                        https://www.city.kyoto.lg.jp/

日経МJ(2023年11月12日付) 毎日新聞(2024年1月16日付)  

 

■街で、ちょっとプライベート空間----用途広がる、「ボックス型シェアオフィス」。

 大勢の人が行き交う駅の構内で、通路の端にしゃがみこんで窮屈そうに書類にメモをしている人や、ホームのイスに座って膝の上でPCを広げて作業をしているといった光景を見かけることがあります。カフェでも、シェアオフィスでもない、狭くてもかまわないので、もっと手早く1人だけの静かな空間が確保できれば----そんな、ビジネスパーソンの願いを叶える「ボックス型シェアオフィス」が、駅ナカ、ビルナカ、街ナカに続々と出現しています。

 各社とも、高さ約2m30cm、幅と奥行きがそれぞれ1m20cmほどの電話ボックス状で、1人用が基本。ブース内には、机・イスのほか、モニター・電源・USBポート・Wi-Fi・空調などが装備。ウェブサイトや専用アプリから予約し、15分ごとに300円程度の料金がスタンダード。会員登録が必要ですが、基本的に各社、登録料は無料。

 次の訪問先まで時間が空いてしまったなど、外回りのスキマ時間に。また、移動中のウェブ会議や資料作成、PC業務など。さらに、疲れて一休みやライブ配信、メーク直しなどにも。最近では、オンラインの英会話レッスンや自習室としてなど、ビジネス用途以外の使われ方も増えています。

 「テレキューブ」(運営/ブイキューブ)は、主に首都圏をはじめ、名古屋、大阪、仙台などの地方空港に設置。1年前と比べ、会員数は7割増、設置台数は5割増の約400台に。[富士フィルムビジネスイノベーション]が2020年から運営する「CocoDesk(ココデスク)」は、首都圏と大阪の地下鉄駅構内を中心に約100台を設置。[2Links](東京)が提供する「リモートワークボックス」は、15分150円からと、他社の半分近くの料金設定。ホテル、スーパー銭湯、カフェ、フィットネスジムなど、設置場所を拡大中。

 ボックス型シェアオフィスの最大手ともいえる存在が、駅を本拠地とする[JR東日本]の「STATION BOOTH」。2019年にサービスを開始して以来、東日本エリアだけでなく、北海道や西日本エリアにも進出し、約550拠点、会員数は約25万人を突破(2022年時点)。15分で1人用275円、2人用330円、4人用495円(税込)。郵便局、官公庁、カフェ、フィットネスジム、コンビニのイートインスペースなどにも設置。

 リモートワークでの会議参加は集中できない、小さな子がいてうるさい、気分転換に、などの理由で住宅地近くのブースの稼働が急上昇。ブースを使うために駅に来るという人も増えているといいます。

 オフィスと自宅の中間に位置し、“第3の仕事場”として存在価値を高める「ボックス型シェアオフィス」。これからも、さまざまに進化を遂げながら、街に増殖していくと思われます。

※参考:

テレキューブ          https://telcube.jp/

ココデスク            https://www.fujifilm.com/fb/solution/menu/cocodesk/

リモートワークボックス  https://remotework-box.jp/

STATION BOOTH     https://www.stationwork.jp/ 日経МJ(2023年11月6日付)