NEWS
-お知らせ-

お金の情報・まめ知識 2024/1/1

LDCレポート【1月号】

■人目気にせず“わたしだけ”。女性に人気の「個室型フィットネスジム」。

 コロナ禍前の2019年には、約335億円の売上高だった“フィットネスジム市場”でしたが、外出自粛を余儀なくされた2020年には、売上高が約224億円と大きく減少(経産省)。しかしその後は、皮肉なことにコロナ禍をきっかけに健康への意識が高まったことが追い風となり、徐々にジムに通い始めるユーザーが増加。その結果、2021年に約245億円、2022年には約268億円と、コロナ禍前の300億円レベルには及ばないまでも、市場は着実に回復基調に乗り、ジムに賑わいが戻ってきています。

 なかでも最近、盛況なのが「完全個室型フィットネスジム」です。似た名称で“個室型パーソナルジム”という形態があります。他の人に“見られず・接触せず”、個室でトレーニングできる点は共通していますが、パーソナルジムはトレーナーと2人きりという状態になるところが、1人きりで行う「完全個室型フィットネスジム」と異なる点。

 2023年、東京・大塚に開業した個室ジム[roobby-fit(ルービーフィット)](運営/東急)は、入会登録料は0円。1室当たりの利用料金は、30分200~1,210円。一般的なジムのように月ごとの固定料金制ではなく、“都度払い制”なので義務的なストレスを感じることなく気が向いたときに気軽に利用できるというメリットが。腹筋や腕力を鍛える器具をそろえた“TRAINING”が2室、ランニングやバイクをこぎながら大画面でお好みの映像が楽しめる“RUN & BIKE”が3室、ダンスやヨガ、子どもと一緒の運動などに利用できる“STUDIO”が2室の、計7室で構成。希望する部屋をスマホで予約。ジム初心者やベビーカーを押してやってくる子連れママなど、他の利用者の目を気にせず使えるのでメークを気にしなくても大丈夫と、利用者の6割近くを女性が占めています。

 1人きりでトレーニングしたいけど、何をどうやればいいのか分からない……こうしたジムビギナーのニーズに応えたのが、[ハコジム](広島)。室内の鏡(AI搭載のスマートミラー)に映し出されるトレーナーのバーチャル映像と運動する自分の姿を鏡で確認しながらトレーニングできる画期的な個室ジムです。最初にいくつかの質問に答えるだけで、その人の目的や体力に合ったメニューをAIが自動的に組んでくれます。予約はスマホから。利用料は月額5,280円(税込)。

 ジム人気が高まっている一方で、“通い続けるのが面倒”“コスパが悪い”など、利用頻度と月額料金が見合わず解約に至る途中退会者は、増加傾向に。

 そんな背景のなかで出現した「完全個室型フィットネスジム」。ライフスタイルの変化を巧みに捉えて、新たな消費を呼び込んでいます。

※参考:

経済産業省        https://www.meti.go.jp/

ルービーフィット      https://www.roobby-fit.com/

ハコジム           https://hacogym.jp/

日経МJ(2023年9月10日付) 

 

“静音生活”でノンストレス。こんな物件欲しかったと人気の「防音マンション」。

 賃貸マンションにおける住民同士のトラブルで最も多いのが“騒音問題”。特に在宅時間が増えたコロナ下、静かな環境で暮らしたいと願う人にとっては切実です。

 そこで今、にわかに注目度が高まっているのが「防音マンション」。これまでは楽器演奏を目的とした人が中心でしたが、近ごろはそういった人たちに加え、自宅で音楽教室を経営する人や在宅テレワーカー、ボイストレーナー、ライブ配信を行うユーチューバー、ゲーム実況のストリーミング配信者など多岐にわたり、居住者の幅に広がりをみせています。ここに、賃貸マンション市場の新たなニーズが潜んでいたのです。

 [リブラン](東京)が提供する防音に特化したマンションは、“ミュージック”と“マンション”を掛け合わせた「ミュージション」。24時間楽器演奏可能な賃貸マンションシリーズです。首都圏に30棟、計727戸を供給していますが、うち14棟が2020年以降の竣工で、コロナ禍での急増がうかがえます。全物件の平均入居率は99.4%(2021年)と驚異的な数字を誇り、空室待ちが2800人もいるという人気ぶり。空室が発生しても30分以内、遅くともその日のうちに次の入居者が決まるとのこと。

 防音性能は、“D値”という数値で表され、大きくなるほど高性能。“55”あれば“特に優れている”との評価が得られます(日本建築学会)。「ミュージション」の場合、ほぼ全戸が“D-70”で、グランドピアノが24時間演奏可能なレベルです。

 防音技術の分野での高い実績を生かし、「音楽マンション」ブランドを展開している[越野建設](東京)は、これまで38棟692戸を供給。入居率は99.3%で、社会人が約8割、音大生など、学生が約2割。「音楽マンション」の特徴は、一目見ただけで防音性能の高さが分からないような構造であること。防音に重きを置くあまり、一般的な日常生活の中で違和感をおぼえないようにと心掛けています。

 防音マンションの賃料は、相場より1~3割ほど高いのが一般的。その理由は、防音を実現するための高度な設計・施工、特殊な防音資材の使用などから、通常の賃貸物件より多くの設備コストが発生するため。さらに、入居需要に対して物件供給数が圧倒的に足りていない希少性が家賃設定を押し上げている要因といえます。

 では、これほどの需要が見込まれるなら、大手がどんどん参入して増やせばいいのでは?と思いますが、そこには前述の、特殊で高度な防音ノウハウを持つ技術者や企業が少ないという実情が。しかも防音マンションは、需要増とはいえ住宅市場全体からみればほんの数パーセントにすぎないニッチ市場であることに変わりなく、大量生産・大量販売による利潤の最大化が宿命の大手住宅メーカーが手を出すには、まだ機は熟しているとはいえないということのようです。

 出す音・入ってくる音----住まいの“音”への関心は高まり、物件の選択基準の優先順位でも防音性能が上位に。これからは、防音マンションのような、コンセプト型物件の供給が増え、不動産市場も“少量生産・多品種化”を志向せざるを得なくなる社会が訪れそうです。

※参考:

リブラン            https://www.livlan.com/

日本建築学会             https://www.aij.or.jp/

越野建設          https://www.e-koshino.co.jp/

日経МJ(2023年7月21日付) 

 

■世界から愛されて数兆円。まだまだ広がる、「ポケモン経済圏」。

 今や、世界中から愛されるコンテンツキャラクターに育った「ポケットモンスター(以下、ポケモン)」。28年前(1996年)に誕生して以来、ゲームのみならず、アニメ、映画、グッズ、カードゲームなど、すさまじい勢いでメディアミックスをマルチに展開。ポケモン関連のゲームソフト累計出荷数は4億4000万本以上を達成(2022年)。また、世界でポケモンの知名度を一気に高め、社会現象にまでなったスマホゲーム「ポケモンGO」(2016年)は、全世界で累計10億ダウンロードを突破。

 “ワンソース・マルチユース型”のビジネスモデルでダイナミックな循環を形成し、巨大な経済圏をつくり上げてきたポケモンワールド。その累計経済規模は約13兆円に上るとみられ、単純計算で、毎年5000億円近くの額を27年間に渡って稼ぎ続けてきたことになります。キャラクター別の総収益ランキング(2019年/米TITLE MAX)でも、オリジナリティーやクオリティーで高評価を獲得。「ハローキティ」や「ミッキーマウス」を上回り、文字通り名実ともに世界で最も収益性の高い“モンスター・キャラクター”であることが証明されています。

 ポケモンビジネス成功の二つのキーワード。それは、“長く続く”と“横に広げる”です。この基本的考えを具現化し、裾野を広げる取り組みがさまざまな領域で活発に行われています。

 2018年にスタートした「ポケモンローカルActs」は、その地域が選んだ“推しポケモン”が応援キャラクターとなって地域の魅力を国内外に発信するコラボ企画。イベント出演やスタンプラリー、コラボグッズの販売など、現在、8地方でポケモンたちが活躍しています(2023年9月時点)。また、“ポケふた”と称するデザインマンホールの設置もこの活動の一環で(全国300枚以上)、“ポケふた”目当てに訪れる観光客も増えつつあるとのこと。なお、この「ローカルActs」の取り組みでは、キャラクターライセンスの使用料は発生していません。 

 コロナ禍の最中に始めた「ピカチュウジェット」も同様に、ライセンス使用料は無償で提供されています。機体にキャラクターをプリントして楽しい気分を演出。スカイマーク、ANA、チャイナエアラインなどが共感して実現しました。現在、5社7機が国内外を就航中。

 2023年8月には、ポケモンバトルの世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス」が横浜で開催されました。カードゲームなどで競い合って世界一を決める大会で、ポケモンの生まれ故郷、日本で初めての開催となりました。3日間で、50カ国2000人のプレーヤーと1万人のファンが集いました。

 1990年代から長い時間を費やし、手塩に掛けて育て上げてきたポケモンブランド。能や歌舞伎のように何世代も続きながら最前線にい続けることが、[株式会社ポケモン]としての願いです。二つのキーワードの継承の上に実現するであろう、100年後のポケモン像に期待しましょう。

※参考:

ポケモン         https://www.pokemon.co.jp/ 日経МJ(2023年9月27  日付)