NEWS
-お知らせ-

お金の情報・まめ知識 2023/11/1

LDCレポート【11月号】

■日本はまだ浸透途上。インバウンドではトレンドの「ガイド付きツアー」。

 海外の観光地では一般的な「ガイド付きツアー」が、日本でもインバウンド向けに広がりつつあります。“観光ガイド(以下、ガイド)”は、観光客に旅先の観光スポットの文化や歴史、産業などをわかりやすく解説し、より興味を抱いてもらうようにナビゲートする“ガイド役”。その場所や施設などについての専門的な知識やスキルが求められます。一見、“添乗員(ツアーコンダクター)”と同じようなイメージを持たれがちですが、実は大きな役割の違いがあります。添乗員は、ツアーに同行して、出発から帰着までスケジュール通りに滞りなく安全に進むように調整、管理する人のことですが、ガイドにはそういった時間的、旅程的な管理は求められません。

 ガイドには、日本人向けの“日本語ガイド”と、インバウンド向けの“通訳ガイド”の2種類があります。外国語ができるガイドは、正式には“通訳案内士”と呼ばれ、国家試験「全国通訳案内士試験」に合格した人に限られていました。しかし、インバウンドの激増を受け、政府は2018年に「通訳案内士法」を改正し、資格がなくても外国人へのガイドができるようになりました。これで、海外駐在経験のあるシニアや英語を学ぶ学生、会社員として働きながら副業でガイドを務めるなど、幅広い層の人が活躍しやすくなりました。

 インバウンドの増加につれ、ガイドの仲介サービスも増えています。[JAPAN TOUR GUIDE](大分)は、ローカル体験を希望する外国人観光客と英語を使いたい日本人のボランティアガイドとを無料でマッチングするサイトを運営。また、スキルの高いガイドの育成を目指すガイドコミュニティー「Japan Wonder Guide」を運営する[ノットワールド](東京)では、2022年から、月額1100円(税込)でガイドに役立つ知識・スキルに特化した研修動画の見放題サービス、いわゆる“ガイドのサブスク”を行っています。「ジョン万次郎の生涯を知る」「浅草の芸者さんと行く“酉の市”」など、特色のある動画プログラムを提供(毎月4~5本の新作動画をアップ)。

 “ガイド付きツアー”が増えている背景には、コロナ禍の影響で大人数での行動を控える傾向が強まり、個別のニーズに合った観光を楽しもうという旅行者が増えたため。それでも、訪日外国人による日本でのガイド利用率は4%にとどまっています(2019年/観光庁)。一方、米国では日本人観光客の25%がガイドを利用しているというデータも(米政府統計)。

 観光庁によると、インバウンドの数が増えているにもかかわらず、1人当たりの消費額は伸び悩んでおり、政府は2023~2025年度の『観光立国推進基本計画』に、初めて1人当たり消費額の目標を、2019年の15万9000円から20万円に引き上げることを盛り込みました。漠然とした数字より、“1人当たり20万円”という、より身近で具体性を帯びた数字を掲げることで、実現性が一段と高まると思われます。

 1人当たりの消費額を押し上げるためにも、個別ニーズに対応したガイドの“仕事ぶり”がいっそう重要になってきそうです。

※参考:

(一社)日本添乗サービス協会     http://www.tcsa.or.jp/

JAPAN TOUR GUIDE          https://tourguide.jp/

ノットワールド               https://knotworld.jp/

観光庁                   https://www.mlit.go.jp/kankocho 日経МJ(2023年4月19日付)

 

■健全なる精神は健全なるゴミ拾いに宿る。「スポGOMIワールドカップ」開催。

 野球のWBCをはじめ、女子サッカー、ラグビーなど、今年は世界大会が目白押し。そんなメジャースポーツに混じって11月に日本で開催される、まだ耳慣れない世界大会があります。世界20カ国が参加する「第1回 スポGOMIワールドカップ2023」です。「スポGOMI」とは、ゴミ拾いとスポーツの要素が融合した、れっきとした“競技”で、2008年に日本で誕生しました(運営/一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブ<東京>)。

 3~5人が一組のチーム対抗戦。あらかじめ決められたエリア内で、1時間の制限時間内にどれだけのゴミを拾い集めるかというのが基本ルール。ほかにも、チーム内の選手間の距離は10m以内を保つこと、走らないこと(早歩きは可)、乗り物を使わないこと、粗大ゴミは拾わないこと、ゴミ箱のゴミをあさらないこと、などが決められています。参加は、年齢・性別・国籍不問(未就学児は保護者同伴)。参加費無料。

 各チームには、安全面の確保から審査員が帯同します。

 ゴミは種類や重量ごとポイントに換算され、合計点を競います。例えば、ビニール傘、ライター、鍋などの“燃えないゴミ”は、100g=5ポイント。“プラゴミ”は100g=50ポイント、など。ただ単にゴミの重さだけで勝敗が決まると不公平になってしまうということで、軽量で子どもでも拾いやすい“タバコの吸い殻”は、獲得ポイントを高くするように(100g=100ポイント)調整しています。

 当初は、“遊び半分のゴミ拾いなんて”などと批判もありましたが、やがて広く意義が認められて評価されるようになり、自治体や企業から支援を得て開催できるまでになりました。15年間で約1200回開催し、参加人数は延べ13万人に達しています。2019年からは毎年、高校生ゴミ拾い日本一を決める「スポGOMI甲子園」を開催しています。

 “ゴミ拾いはスポーツだ!”の理念は国境を越えて広がっており、2016年からは、ロシア、ミャンマー、韓国、インドネシアなど8カ国で開催。こうした気運の中から、初の世界規模の大会として“W杯”構想が沸き起こりました。日本での国内予選は今年4月に始まり、9月に47都道府県の勝者が出そろい、10月の全国大会で日本代表が選出されます。海外勢は、インド、イギリス、イタリア、スペインなど19カ国で予選が着々と進み、W杯出場権を得ると、日本財団や[ファーストリテイリング]の支援で東京までの旅費と宿泊費が支給されます。

 参加者は、はじめのうちはゴミを見つけて喜んでいますが、だんだんと“ゴミがあることを喜ぶのは、おかしいことなのでは?”とモヤモヤしはじめ、競技が終わるころには、ゴミに対する意識が変わってくるといいます。この意識の芽生えこそが、従 来の単なる“ゴミ拾い”との大きな違いです。

 スポGOMIの究極の目標は、世界中の街に落ちているゴミをなくすこと。つまり、この競技自体が不要となることにあります。主催者は今後、ゴミ拾いだけにとどまらず、“スポ雪かき”や“スポ落ち葉拾い”といった、地域の困りごとをスポーツの面白さをプラスして楽しい汗をかきながら社会貢献活動の幅を広げていきたいと考えています。

※参考:

環境省                      https://www.env.go.jp/

(一社)ソーシャルスポーツイニシアチブ  https://www.spogomi.or.jp/

ファーストリテイリング             https://www.fastretailing.com/jp/ 日経МJ(2023年7月31日付)

 

■社外からも気軽にアクセス。自社への愛着度を高める、今どきの「社内報」。

 「社内報」という媒体は、残念ながら、多くの企業において経費削減の“トップバッター”に挙げられるようです。カラーだったものが1色刷りになったり、ページ数や発行回数が減らされたり、挙句は休刊などの対象に。しかし、企業へのロイヤルティ(帰属意識)を保つのが難しくなっている今だからこそ、「社内報」の存在が見直されはじめています。顔を合わせる機会が減り、社員同士のつながりを維持するための重要なコミュニケーションツールとしての役割が期待されているのです。

 “紙”ではなく、パソコンやスマホで閲覧できる“Web社内報”(オープン社内報、とも)を導入する企業が増えています。自由なタイミングで更新できる速報性や、閲覧数の把握しやすさ、リンクや動画コンテンツも共有・反映できる点、閲覧者との双方向コミュニケーションがとりやすいなど、紙媒体にはなかった多くのメリットを併せ持つWeb版。あえて誰でも見ることができるように、Web上に一般公開しているのが特徴です。

 求人情報サービス大手の[エン・ジャパン](東京)では、「ensoku(エンソク)」という社内報を自社のサイトで公開。社員の日常、仕事、チームのトピックス、同僚の紹介など、社員一人ひとりが毎日更新し、丸ごと社外に公開するスタイル。専任のライターや担当者は置いておらず、社員全員がレポーター。編集&企画会議も行わず、記事の中身についての細かなルールは設けていませんが、機密情報が映り込まないようにするなどのNG管理はしっかりと。“ensoku=遠足”が表しているように、社員みんなで自発的に楽しんで手作りする社内報を実践中。

 [モスフードサービス]が力を入れるのは、社員のみならず、加盟店の店長やアルバイトに情報を発信するために開発した専用アプリ「チェーン報」。紙媒体にかかる年間費用の3分の1にまで圧縮できたとのこと。ゆくゆくは、商品に関するアイデアを募るなどの双方向性を持たせた取り組みも検討中。

 テキストや映像ではなく、“声の社内報”を始めたのは、タクシー配車アプリの「GO」を提供する[Mobility Technologies](東京)。2022年から、音声配信アプリ“Voicy”のチャンネルを社内向けに活用。全国6拠点に分散しているため距離的ハードルを解消するためのツールとして導入。毎週2~3本を配信中。

 ひと昔前までの社内報といえば、社長の挨拶、新入社員紹介、社員の動静、社内行事レポートといったところが主なコンテンツでした。それが、デジタルツールの発達や雇用形態・働き方の多様化などを背景に進化。何より大きな変化は、社員一人ひとりが情報の発信源となって、“生の声”を投稿できるようになったこと。

 コロナ禍で低下した自社へのエンゲージメント(貢献意欲)を高め、離職防止や仕事へのモチベーションアップの貢献ツールとして、新「社内報」の発揮する“実力”が意外な一手となりそうです。

※参考:

エン・ジャパン            https://corp.en-japan.com/

モスフードサービス        https://mos.jp/

Mobility Technologies       https://mo-t.com/ 日経МJ(2023年5月17日付)