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お金の情報・まめ知識 2022/10/1

LDCレポート【10月号】

■欧米の“和ブーム”で、空前の「緑茶」人気、沸騰。

 政府の掲げる“農産物輸出拡大戦略”で重点品目に位置付けされている一つが、「緑茶」です(農水省)。国内での需要が縮小している反面、海外では、日本食ブームや健康志向の広がりに支えられ好調に推移。2021年には、輸出額が前年比26%増の204億円と、ここ10年で約4倍に。輸出量も前年比17%増(約6200トン)と、いずれも2年連続で過去最高を更新しました(財務省)。

 緑茶の最大の生産国は中国です。次いで、日本、ベトナム、インドネシアの順で、日本の生産量は世界の緑茶の1割強。世界中で飲まれている緑茶の9割近くは、中国で生産されているというのが現状です。

 日本からの輸出先のトップは米国で、2021年には金額ベースで輸出全体の半分を占め、2位はドイツ、3位が台湾と続きます。

米国では、「スターバックス」の“抹茶ラテ”に代表されるようにフレーバーとして“MATCHA”が広く認知されていることから、粉末状茶の輸出が中心となり、数量ベースで緑茶全体の7割を占めるほど。

 一方で、EU諸国や台湾、シンガポールなどでは、粉末より“茶葉(リーフ茶)”が好まれる傾向が見られます。特に、お茶といえば紅茶かハーブティーが主流だったフランス人の生活にも、和食人気を背景に、今、緑茶が浸透しています。

 輸出にあたって避けて通れない課題が、欧米で実施されている残留農薬基準のクリアです。そのため、海外輸出を念頭に、緑茶の有機栽培が広がっています。政府は、有機食品に対する認証制度“有機JAS(日本農林規格)”を制定すると共に、有機栽培用品種の植え替え促進や補助金付与など、有機栽培に取り組む農家を支援しています。ほかにも、『日本茶輸出促進協議会』や『NPO法人 日本茶インストラクター協会』などが中心となって、緑茶の魅力を英語で発信したり、“日本茶アドバイザー資格制度”の普及や“日本茶検定”の実施などに取り組んでいます。

 日本からお茶が輸出されるようになったのは、1858年、徳川幕府が米国との間で“日米修好通商条約”を締結した翌年のこと。米国へ向けて181トンが輸出されました。それから、かれこれ160年余り。今や世界を相手に6200トンを輸出するまでになった緑茶市場。ここまで大きく成長した理由には、環境にやさしく、体にやさしく、ベジタリアン的ライフスタイルといった現代の世界的トレンドにマッチしていることに加え、緑茶を通して、“禅”などの精神性の高い日本文化への興味や憧れも少なからず寄与しているのかもしれません。

※参考:

農林水産省                  https://www.maff.go.jp/

財務省                     https://www.mof.go.jp/

日本茶輸出促進協議会           https://www.nihon-cha.or.jp/export/

NPO法人日本茶インストラクター協会  https://www.nihoncha-inst.com/ 日経МJ(2022年6月12日付)

 

手軽に栄養「オートミール」。よりおいしく、食べやすくなって、再注目。

  コロナ禍によってもたらされた数少ないプラスの副産物として、巣ごもり生活の運動不足からくる“健康意識の高まり”が挙げられます。そのおかげ(?)で、健康志向の商品需要が拡大し、中でもシリアル市場が急成長。昨年には過去最高の出荷額を更新しました(日本スナック・シリアルフーズ協会)。その好調をけん引するのが、「オートミール(oatmeal)」です。

 オーツ麦を脱穀し、食べやすく加工したシリアル食品が「オートミール」。オーツ麦には、血糖値抑制効果と整腸効果のある食物繊維が含まれているほか、鉄分やビタミンB1、タンパク質などの栄養素を豊富に含み、さらに白米に比べてカロリーは約半分、糖質量は約3分の1という特徴を持っています。

 感染拡大が本格化した2020年初頭から、SNS上では、ダイエットや美容系のインフルエンサーたちを起点に、オートミールの健康価値やお湯や牛乳をかけるだけで食べられる簡便性が話題となり、さらに、テレビ番組などでも頻繁に取り上げられたことから一気に認知が広がりました。

 オートミールが、ほかのシリアルと決定的に違うのは、主食(食事)の代わりになり得る点です。水と混ぜて電子レンジで加熱するとお米のような弾力のある食感に変わります。これを、オートミールを愛する“オートミーラー”たちは、“米化(こめか)”と呼びます。オートミールを使った雑炊やリゾット、カレー、おにぎりなど、これまで温かくして食べるシリアルがなかったところに、新たな選択肢が加わり、販売の現場でも通年需要を喚起できると歓迎。消費者から生まれたこの新しい食べ方は、SNSを中心に広がってトレンドとなり、オートミール市場の拡大に拍車をかけることになりました。

 この盛り上がりがメーカーを動かし、相次いで新商品が投入されています。

 [カルビー]は今春、初めてオートミール市場に参入。独自の製法で、オートミールを長時間、熱を通して焼き上げた「ベイクドオーツ」シリーズ(「フルーツ」と「ナッツ&シード」の2品)を発売しました(各540円前後)。オートミールは通常、お湯などで一旦ふやかして食べますが、この商品はあらかじめオーツ麦に火入れしているため、そのまま食べることができるのが売り。

 [日本ケロッグ]も今春、大豆由来のタンパク質フレークを加えた「ケロッグ プロテイン オートミール」(378円)を発売。[旭松(あさひまつ)食品]は、国内初となる即席カップタイプのオートミールを開発。湯を注いで1分後に粉末スープを入れ、かき混ぜるだけ。味付けは、きのこクリーム、紀州うめ、まろやかチキンなど、5種類(各188円)。

 コロナ禍で一気に存在感を増した「オートミール」。特に健康や美容に敏感な女性の購入率はコロナ禍前の約10倍と驚異的な伸びを見せ、巣ごもり生活を象徴する商品となりました。ただ、知名度の割に、まだ食べたことがないという人が5割もいるということから(日清シスコ調べ)、市場拡大の余地はまだまだ大きいといえます。

※参考:

日本スナック・シリアルフーズ協会  http://jasca.jp/

カルビー                  https://www.calbee.co.jp/

日本ケロッグ               https://www.kelloggs.jp/

旭松食品                 https://www.asahimatsu.co.jp/

日清シスコ                https://www.nissin.com/jp/

日本食糧新聞社 日経МJ(2022年6月3日付)

 

■コロナで加速。伸び続ける「家具・インテリア」市場。

 コロナ禍で低調傾向にある“家電”や“アパレル”とは対照的に、「家具・インテリア」市場は堅調な伸びを見せており、市場規模はこの10年で約4割拡大。コロナ禍による在宅勤務をはじめ、自宅で長時間を過ごす新しい生活様式が定着したことで、自宅のワーキング環境の見直しや普段の生活の中で快適性を重視した買い替え需要などが追い風となって需要の押し上げにつながったと思われます。

 また、商品ニーズにも変化が見られます。これまで、家具といえば“重厚で高級感のある高額なもの”が主流でしたが、近年は、低価格なのにセンスが良くてコスパが高い商品を求める傾向が強くなっています。そのため、低価格帯に強みを持つ大型量販店が大幅に収益増。特に、生産から販売までを自社で行う“SPA(製造小売り)”方式の[ニトリ]や、世界規模での大量生産とユーザー自ら組み立てるシステムで価格を抑える[イケア]といった安価な家具専門店が好調。同時に、ECに特化した家具の販売も大きく伸びています。ネット販売専門の家具ブランド[LOWYA(ロウヤ)](運営/ベガコーポレーション)は、手頃な価格設定とトレンド性の高さが支持され、前年を大幅に上回る業績を挙げています。

 片や、高級家具店や町の小規模家具店は、業績が振るわず苦戦を強いられています。今後も、大手&EC市場との二極化がより鮮明となるのに加え、相次ぐ異業種の参入で、低価格帯市場のパイを取り合う競争が激しさを増していくことが予想されます。

 [良品計画]は、収納からリフォームまで一体的にカバーする大型店を東京・有明に立ち上げ、全国展開を図ります。

 アパレル[ビームス]のブランド「BEAMS DESIGN」は昨春、ニトリと組んで家具の共同開発に乗り出しました。

 家具市場拡大の背景として、コロナ禍での消費者のマインドが重要なファクターとしてからんでいることは見逃せません。これまで、家(部屋)の中はプライベートな空間で、あくまでも住人にとって快適な場所かどうかが重要でした。しかし、コロナ以降、自分の日常を写真に撮って投稿したり、自室からリモート会議に参加したりと、自分だけの空間だったはずの家の中が、一部とはいえ、人目に触れる機会が激増。家具選びの際にも、つい他人の目線を意識し、写真の背景に映り込むことを前提に考えるようになっているのです。人からセンスがいいと思われるような部屋、人に見られても恥ずかしくない家具-----いわば、もはや家具は自己表現のツール、ファッションの一部に。それだけ、近頃の家具は、消費者が気軽に買うことのできるアイテムの一つになったという表れでもあります。

※参考:

ニトリHD                  https://www.nitorihd.co.jp/

イケア・ジャパン            https://www.ikea.com/jp/ja/

LOWYA                  https://www.low-ya.com/

良品計画                https://ryohin-keikaku.jp/

ビームス                 https://www.beams.co.jp/ 日経МJ(2022年5月27日付)